不登校の子どもにあらわれる不安障害。その原因と症状、治療法、親の接し方を紹介

学校のことを考えると不安
学校に行けないことが不安
今の生活が続いてしまったらどうなるんだろう

など、不登校の子どもは常に多くの不安と戦っています。また、文部科学省が報告した『不登校児童生徒の実態把握に関する 調査報告書』によると、2割を超える不登校の子どもが「不登校になったきっかけがわからない」と答えているため、漠然とした不安を感じている子どもも少なくないと考えられています。

そして、このような不安が大きくなったり募ったりすることで「不安障害」を引き起こし、不登校に悩む子ども達をさらに苦しめるといったケースも少なくありません。そこで今回は、不登校の子どもにあらわれる“不安障害”の原因や症状、治療法や理想的な接し方などについて説明していきます。ぜひ本記事を通して不安障害について理解を深め、お子様の生活がより良いものとなるようにサポートしていきましょう。

目次

不安障害とは

不安障害とは

不安障害とは不安が大きくなったり強くなったりすることで緊張状態になり、心身に不快感や苦痛を感じ、生活に支障をきたすことをいいます。

「人前で発表するとドキドキする」や「テストの日はお腹が痛くなる」など人間は誰しもが緊張をしますが、緊張による不快感・苦痛で生活に支障(障害)をきたしてしまう場合は、医師の判断によって“不安障害”と診断されることになります。どの程度で“不安障害”と診断するかは医師の判断にゆだねられますが、お子様が「不安が強く生活をするのが困難だ…」と感じているならば、専門家の指示を仰ぐことが大切です。

またご家庭では、不安障害の患者にすべき対応を行うなど、お子様の不安や辛さに寄り添ったサポートを心がける必要があります。

不登校の子どもにあらわれる不安障害について

不登校の子どもにあらわれる不安障害について

不安障害の概要が理解できたところで、次に「不登校の子どもにあらわれる不安障害」について説明していきます。今回ご紹介するのは

・社交不安障害
・全般性不安障害
・パニック障害
・強迫性障害

の4つです。不安障害の原因や症状を“不登校の子ども”に絞ることで、より深く的確に原因や症状を理解できるようになります。ぜひ下記の内容を参考にして、お子様にとって理想的なアプローチを行うようにしましょう。

社交不安障害

社交不安障害の症状は下記の通りです。

・「人前で話す」「人前で字を書く」など他者に注目される場面で心身に不快感・苦痛を感じる。
・他者の視線に敏感になるあまりに、人がいる場所に不安感や恐怖感を感じる場合もある。

不登校の子どものケースで例えると、「発表を強いられる場面が怖い」「黒板に字を書くのが怖い」など“他者の視線に敏感になり、生活に支障をきたすケース”があてはまります。

また、社交不安障害が起きる主な原因は、「発表の際に恥ずかしい思いをした」「黒板に字を書いたときにからかわれた」といった人前で傷つく経験が起因となっていると考察できます。自己肯定感を高めることで失敗から立ち直る力が強まるので、日頃から自己肯定感を高めておくことが大切です。

発表に慣れるまでは“手を上げていないときは指名をしないように先生に頼む”など学校と連携をはかり、お子様の不安を軽くするのもいいでしょう。

全般性不安障害

全般性不安障害の症状は下記の通りです。

・はっきりとした原因や理由がない場合でも不安を感じ、心身に不快感や苦痛を感じる。
・起こっていないネガティブな想像をして、不安感が大きくなってしまう。
・常に緊張状態なので、疲れやすく、頭痛や肩こりといった症状が起きやすい。

不登校の子どものケースで例えると、「教室に入るのが苦手…」「〇〇くんがいると不安…」といった特定の原因にとどまらず、「学校に関わる全てが不安に感じる」「常に不安感がある」といった多岐にわたる不安を感じるケースが、全般性不安障害にあてはまります。

不登校の子どもにおける全般性不安障害が起きる原因は、学校で感じた辛さや悲しみが大きく、心が防衛反応を示しているものと考察できます。まずは心身のケアを第一にして、「保健室登校をしてみる」「午前中のみ登校する」など焦らずにスモールステップで成功体験を重ねていくことが大切です。

パニック障害

パニック障害の症状は下記の通りです。

・前触れもなく突然、“死の恐怖を感じるほど”の苦痛(息苦しさや動悸など)に襲われる。
・「また苦しい思いをするかもしれない(予期不安)」と感じ、苦痛を感じた場所・場面に恐怖を抱く。
・苦痛を感じた場所・関連する場面にも恐怖を感じ、安全な場所から出るのが難しくなることもある。

不登校の子どものケースで例えると、「息苦しくて死んでしまうかもしれないと感じた」「教室で緊張感に襲われパニック発作を起こしてた経験があり、教室に入ると“また発作が起きるのでは?”と感じ、教室に入れなくなってしまった」といったケースなどがあてはまります。また、深刻化すると教室にとどまらず、学校に足を運ぶことさえも難しくなる場合があります。

不登校の子どもにおけるパニック障害が起きる主な原因は、強いストレスや緊張感などと考えられています。また、パニック障害の症状(発作)は死の恐怖を感じるほどに強烈な苦痛なので、一度体験すると予期不安に陥る場合がほとんどといわれています。パニック障害も心身のケアを行い、緊張感を軽減し、「今回は発作が起きなかった!」という成功体験を無理せずに重ねていくことが大切になります。

強迫性障害

強迫性障害の症状は下記の通りです。

・細菌やウィルスなどの汚れが落ちきれていないと恐怖を感じ、必要以上に手を洗ってしまう。
・忘れ物がないか、戸締りはしているかなど、必要以上にくり返し確認してしまう。

不登校の子どものケースで例えると、「学校内で、または帰宅後自宅などで何度も何度も手を洗ってしまう」「忘れ物がないか何度も確認してしまうので時間に遅れ、登校するタイミングを逃してしまう」といったケースなどがあてはまります。

不登校の子どもにおける強迫性障害が起きる主な原因は、「学校でインフルエンザなどが流行し感染し、大変な思いをした」や「忘れ物をしたときにからかわれて嫌な思いをした」などの経験が原因になる場合があります。また、手を洗う行為は心を落ち着かせる作用があると考えられており、不安感を軽減するために手洗いをくり返していると考える専門家も多いようです。このような場合は、不安感や心の辛さを軽減させるとともに、「行為をくり返さなくても大丈夫だった!」という成功体験を重ねることが大切になります。

不安障害の治療方法について

不安障害が発症する確かな原因はまだ明らかにされていませんが、ひとりひとりの性格や個性、家庭環境やさまざまなストレスなど、複数の原因が複雑に絡み合い、発症していると考えられています。

そのため、医師や臨床心理士・看護師など専門家に相談し、治療を進めていくことが非常に大切です。専門家による治療方法は、薬を用いて心身の負担を軽減・改善する「投薬治療」と、対話(カウンセリングなど)や思考・行動の癖を改善するトレーニング(認知行動療法)といった「精神療法」が主になります。

また、不登校は教育機関との連携も大切なので、学校とともに不安要素や原因因子を解消することも不登校の子どもには大切な支援であり、治療法といえるでしょう。そして、専門的な分野を除いて、ご家庭でできる取り組みは「生活リズムの管理」「リラックス法」などになります。

成長期の子ども達は日常生活の管理がとても大切です。体内リズムの乱れが原因で不調を感じている場合は、早寝早起きを心がけ、太陽光をしっかりと浴びることで、不調が改善する場合もあるでしょう。また、腹式呼吸は自律神経を整える効果があるといわれているので、呼吸が浅くなっている場合などは正しい呼吸法を意識するなど“リラックス効果”のある取り組みを心がけるのもおすすめです。

不安障害の症状がある子どもへの接し方

不安障害の症状がある子どもへの接し方

不安障害の症状がある子どもへの接し方で、第一に意識すべきポイントは「子どもの痛みに寄り添うこと」です。

きっと大丈夫だからやってみなさい!
心が弱いからそうなるんだよ!

といったように無理に指示したり否定したりせずに、子どもの心身を労わることが大切になります。そして、心身が安定したり落ち着いてきたりしたら、適切なアプローチを開始するようにしましょう。

例えば、不登校の子どもは、学校での出来事に“苦手分野”がある場合が多いようです。

「会話が苦手」「勉強が苦手」「集団行動が苦手」など、不安を感じやすい分野を把握するとどの分野を訓練し自信を持たせればいいか明確になるので、お子様の弱点を強化しやすくなります。苦手分野を強化することで学校復帰の際の自信や安心感になりますので、無理のない範囲で苦手の強化を行うのがおすすめです。

とはいえ、くり返しになりますが、保護者だけで子どもを理解し対応しようとすると、言い合いになったり疲弊したり、悪循環に陥りやすくなります。医師や専門家などに相談し関連機関と連携することで各専門家の長所が活かせるようにもなるので、決して保護者だけで抱え込まないようにしましょう。

ここまでご紹介したとおり不安障害を解消するには親の細かなケアが大切になってきます。

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