遊びの中で学ぶ!子どもの自制心を育てるための方法と注意すべき親の言動

元気がよくて、自分の興味の向く方にどんどん突き進めるのは、子どもにとってとても大切なことです。ただ、集団生活が始まる年齢になると、静かにするべきところ、我慢するべきところはグッと堪えられるようになって欲しいですよね。

ここでは、自分の感情をコントロールできる「自制心」について解説していきます。

子どもの将来にも大きく関わる自制心について、楽しみながら鍛える方法や教育法も紹介します。親が知っておきたい接し方についても見ていきましょう。

目次

自制心とは

自制心とは、自分の欲求や感情をコントロールし、適切な行動を選ぶ力のことです。

自制心は、子どもの成長において非常に重要な役割を果たします。以下のような場面で役立ちます。

自制心が役立つ場面

社会的な行動:
 自制心があれば、順番を待ったり、お友達と遊ぶときにルールを守ったりすることができます。
学習
 集中して勉強や課題に取り組むためには、自制心が必要です。
感情のコントロール
 怒りや悲しみを適切に表現し、他の人と円滑にコミュニケーションをとるために役立ちます。

自制心は、子どもが成長し、社会生活を送る上で欠かせない能力です。母親の温かいサポートと適切な指導が、子どもの自制心の発達に大いに役立ちます。では自制心は何歳から養われるのでしょうか?

自制心は何歳から養われるか

小さな子どもは欲求のまま、感情を露わにするのが当たり前です。では、自制心は何歳くらいから鍛えることができるのでしょうか?自制心というのは、誰かに言われて仕方なく我慢することをいうのではありません。

「ここでは静かにしたほうがいいかな」
「いまは少し我慢をしよう」

と自ら判断し納得した上で自分を抑えられる力、切り替えられる力のことを、自制心🟰セルフコントロールといいます。この自制心は「非認知能力」の中でも重要な要素です。IQや学力のように数値で測ることができる「認知能力」に対して、数値では表すことのできない心の分野の能力を「非認知能力」といいます。

幼児期(とくに4歳から5歳)に著しく発達するとされている、生きるためにとても重要な能力です。

周りの状況を観察して少しずつ判断できるようになり、また「非認知能力」が発達するといわれる4〜5歳の時期が、自制心を育てるためのスタートとして大切な時期になるでしょう。

自制心を鍛える重要性を裏付けする研究

自制心を鍛える重要性を裏付けする研究

これまで世界中で自制心に関する興味深い研究がいくつも行われており、長年にわたる追跡調査も実施されています。その調査によって、幼児期の自制心と成長してからの生活は大きく関わっていることが明らかになっています。

マシュマロ実験

子どもの自制心についてとても有名なのが、この「マシュマロテスト」です。

スタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルによって1960年代後半から4歳児186人に対して行われました。

実験は下記①~④に沿って実施されました。

  1. 実験は大人と子ども1対1で行われる
  2. 机の上にマシュマロが1つある
  3. 大人が子どもに「用事があるから、少し待っててね。このマシュマロは君にあげるよ。もしわたしが戻ってくるまでに食べるのを我慢できたらもう一つあげる。でも戻る前に食べたらこれ一つしかあげないよ」と伝える
  4. 大人が15分後に戻るまでに、マシュマロを食べることを我慢できたかどうかを調査

この結果、3分の2の子どもはマシュマロを食べ、残りの3分の1が我慢できたのだといいます。食べてしまった子はマシュマロを見つめ、触ったりしたりする傾向にあり、我慢できた子はマシュマロをできるだけ見ないようにし、他のことで気を紛らわせて、2つのマシュマロを手に入れました。我慢できた子どもは、目の前のマシュマロが欲しい!という感情に流されず、その先のもっと大きな成果を見ることができたことになります。

このテストは、18年後に追跡調査が行われました。その結果、我慢できた子・できなかった子の間には、大きな違いが生まれていました。我慢できた子どもたちは、学力の面でいうと大学進学適性試験(SAT)のトータルが平均で210ポイント高かったといいます。学力の面だけではなく、その後も社会的な成功を収める傾向にありました。

デューク大の実験

アメリカのデューク大学で行われた研究では、1000人規模のテストと追跡調査が出生から45年にわたって行われました。この実験で分かったことは、幼い時の自制心はその後の人生の心身に大きな影響を与えるということです。

45年後に行われた調査で、幼い頃にしっかりとした自制心を持っていた子どもたちは、他の人より体と脳が生物的に若い状態にあったというのです※。また、自分の現在の生活に対する満足度・幸福度も高いことがわかりました。

ダニーデン研究

ニュージーランドのダニーデンという場所で1972〜73年に生まれた1037人を対象にした”ダニーデン”研究は現在も継続中です※。

対象者を数年ごとに集めて、定期的に健康・発達・幸福についての調査がなされており、最新の調査は2017〜19年に実施されました。自制心については、3・5・7・9・11歳の段階での自制心のレベルが調査され、この幼少期の自制心のレベルがその後人生の学歴や収入、貯蓄額、社会的地位、体の健康状態や犯罪率などにまで大きく関係していることが示されました。また、注目すべきことに、大人になってからの社会的地位は、幼い頃のIQよりも自制心の高さに影響を受けていたといいます。

子どもの自制心の育て方

その後の人生まで大きく左右する自制心。どのようにすれば鍛えることができるのでしょうか?自制心を育てるためには、ただ厳しく我慢をすることを教えるのではなく、ルールを守って生活するという当たり前のことが大切になります。

ルールを作って遊びを楽しむ

できることなら、楽しく遊びながら自制心を育てるのが理想ですよね。そのためのポイントは、複数人で、ルールを守りながら遊ぶということです。例えば鬼ごっこやカードゲームなどでしょうか。

複数人で遊ぶと、どうしても順番を守る必要があったり、自分の考えと違うお友達がいたりと、自分の感情をコントロールする必要が出てきます。みんなで楽しく遊ぶためにルールがあること、そしてルールを守る必要があることに納得すると、自分の感情をコントロールしやすくなります。

親が見本になる

子どもは一番近くにいる親の姿をしっかりと観察し、真似をするものです。大人でも気持ちを切り替えて、感情をコントロールしなければいけない場面がたくさんありますよね。そんな時は子どもに聞こえるように、そうしなければいけない理由も付け加えて口に出してみましょう。

「この本、もう少し先まで読みたいけれど、早く寝ないと明日起きられないからここで終わりにしよう」

子どもは親の鏡です。親が自分の欲求を抑えてやるべきことをやろうとする姿、先にあることを見据えて切り替える姿は子どもの一番の見本となります。

規則正しい生活を心がける

規則正しい生活は子どもにとって自制心を鍛えるためのチャンスだらけです。朝、まだ眠いけれど決まった時間に起きないと遅刻してしまうし、夜は早く寝ないと次の朝起きられません。また、規則正しい生活を送りしっかり睡眠をとることは、自制心を司る脳の前頭前野の領域をしっかり働かせるためにとても重要なことです。

感情をコントロールできない、いわゆるキレる子どもの原因はこの前頭前野の未発達・働きの低下だともいわれています。

子どもの自制心を鍛える遊び

では、具体的に楽しみながら自制心を鍛えることができる遊びにはどんなものがあるのでしょうか?

子どもの自制心を鍛える遊び

喋るの我慢!「ジェスチャーゲーム」

これは喋ってはいけない、という絶対のルールがあります。このゲームは自分の意思で喋らない、というところがポイント。出題者は口に出したいのをぐっと堪え、どう身振り手振りで表せば相手に伝わるか工夫します。また回答者は出題者が体の動きだけで表したお題を、あれこれ想像しなければなりません。自制心だけでなく、さまざまな力が鍛えられるゲームです。

息を押し殺しながら楽しむ「ジェンガ」

高く積まれた54本のブロックを倒れないよう上手に引き抜いて遊ぶ人気のジェンガ。慎重さが必要で、自制心を養うにはもってこいの遊びです。ジェンガは厚みが微妙に異なるため、引き抜きやすいブロックとそうでないブロックがあります。ブロックに触る前に、まずどこを引き抜けばいいのかよく観察し、崩れないようバランスを考えながらそーっと指先でブロックに触れなければなりません。

どれだけ高く積めるかな「積み木重ね」

小さな子が一人でもよくやる遊びですね。バランスをよく見ながら、積み木をできるだけ高く積んでいきます。積み木は、形やバランスを考えながら、そーっと積み木を置かなければ崩れてしまいます。家族やお友達と高さを競えば、また楽しい遊びになりますね。

そっと伝える「伝言ゲーム」

先頭の人からお題をそっと耳に囁いて、次の人に伝えていく伝言ゲーム。前の人の声に耳を澄ませて、自分も小さな声で次の人に伝えていきます。先頭の人が伝えたお題と最後尾の人が伝えられたお題が、合っているか答え合わせをしてみましょう。最後まで間違わずに伝われば「やったー!」となりますし、違っていてもみんなで大笑いとなります。楽しみながら静かにする練習もできるゲームです。

動いたら負け!「だるまさんがころんだ」

こちらも子どもにはおなじみの遊びです。「だるまさんがころんだ」と鬼が振り向いた時には、どんな姿勢であっても止まって身動きをしてはいけません。この時期の子どもは心と体がとても密接に関わっています。そのため、どんな状況であっても自分の体をコントロールして止める必要があるこの遊びは、自分の感情をコントロールする自制心を鍛えるのにぴったりなのです。

緊張に耐える「かくれんぼ」

誰でもできるように思えるこのかくれんぼですが、意外にも隠れるのが苦手な子もいます。それは一人で隠れることに寂しさを感じて我慢できなかったり、静かにしていることが苦手なためです。その気持ちをぐっと堪えて、息をひそめ隠れていることが自制心を養う練習になります。

達成感も味わえる「バランスゲーム」

ゆらゆら不安定な土台にパーツを積んだり、倒れないように慎重にバランスを見ながらパーツを抜き取ったりする、バランスゲーム。崩れたら終わりという、小さな子どもにもわかりやすいルールで、慎重に手指をしっかり使いながらみんなで楽しむことができます。集中力も使い、完成した時の達成感も味わえるゲームです。

仲間との助け合いも鍵!「こおりおに」

鬼にタッチされると氷になってしまい、仲間に助けてもらうまでは動けないという鬼ごっこです。仲間が助けに来てくれるまでは、その場でじっとしていなければならないため、自分の意思で動きを止めている練習になります。仲間との関わりあいも大切な要素のため、より感情をコントロールする練習になるでしょう。

子どもの自制心を鍛える教育法

世界で広く受け入れられている教育法でも、幼い頃に自制心を養うことはとても重要だとされています。

子どもの自制心を鍛える教育法

モンテッソーリ教育

今や世界140以上の国々で取り入れられているモンテッソーリ教育は、100年以上の歴史がある教育法です。

「子どもには自分を育てる力が備わっている」という考え方が根幹にあります。

自主性を重んじ、自由であるからこそ、自ら規律を学ぶのだという理念の元、子どもたちは自分でやることを決めて取り組みます。モンテッソーリ教育では基本的に教具は1つずつしか置いてありません。誰かが使っていた場合はその教具が空くまで待つ必要があります。また、自分で選んだ教具を使って満足するまでおしごと※をしたら、自分で定位置に教具を戻すルールです。自由に自分のやりたいことに取り組むためには、決められたルールを守ることが大切だということを学び、自制心を鍛えることができる教育法なのです。

※モンテッソーリ教育では、遊びのことを「おしごと」、玩具のことを「教具」とよびます。

レッジョ・エミリア・アプローチ

「世界で最も優れた幼児教育」と評されているこの教育法は、イタリア北部レッジョ・エミリア市で始まりました。異なる年齢の仲間と一緒に話し合いで決めたプロジェクトに取り組むことで、自主性・想像力・コミュニケーション能力・やり遂げる力を伸ばしていきます。みんなで話し合って決めたことが、自分たちのルールとなり、自分たちで決めたルールは守らなければならない、そうして自制心が養われていきます。

イエナプラン教育

ドイツのイエナ大学の教授だったペーター・ペーターゼン教授により始められ、オランダで発展した教育法です。一人ひとり価値観が違うのが当たり前で、健常者も障害者も一緒に学び、違いを認め合いながら、主体性・社会性を身につけていきます。

対話・遊び・仕事(学習)・催しの4つを基本活動を行いながら自ら学んでいくというスタイルです。異年齢のグループを作り、教え合い、助け合いながら自分たちの決めた課題に取り組んでいきます。時間割は決まったものがなく、生徒自身が自分の興味や得意・不得意なことを考えながら作りを進めていきます。自分の決めた学習計画、自分で決めたルールを守りながら学びを進めるスタイルは自己管理能力、自制心の獲得に大きく影響します。

自制心を育む上で注意すべき親の言動

自制心は「静かにする」「我慢する」ことだと誤解されがちですが、大切なのは自らそうした方がいい、そうすべきだと判断して自分を抑えることができることです。そのために、親が気をつけなければならない点をみてみましょう。

大きな声を出して怒るor叱る

「静かにしなさい!」
「我慢しなさい!」

言うことを聞かせるために、思わず大きな声で感情的になってしまうこともありますよね。しかしそれは子どもの感情を波立たせてしまい、考えて自ら判断する、自分で感情や行動をコントロールすることを妨げてしまいます。まず子どもに共感し、どうして静かにするのか、なぜ我慢しなければならないのかという理由を穏やかに話してあげることが大切です。

先回りして指示を出す

時間に追われる毎日の中では、つい先回りして子どものやるべきことに口を出してしまいがちですよね。

「歯を磨いてトイレに行かないと、遅刻するよ!」
「もうゲームはやめて、寝る準備をしなさい!」

子どもは、自分はいま何をやらなくてはならないのか、今やらなければそのあとどうなってしまうのか、目の前のやりたいことの、その先にあることまで考えを巡らすことができなくなってしまいます。子どもの様子を観察し、自分で気づいて動ける時を待つことも親ができる大きなサポートです。

まとめ

いかがでしたか?先を見据えて自分の感情や行動をコントロールできる力、「自制心」は幼い頃に身に付けておくことが、その後の子どもの人生を大きく変えることがわかりました。

  • 楽しみながら工夫して遊ぶ。
  • 親が少しだけ口を出さずに待ってみる。

特別なことをしなくても、子どもの自制心を鍛えることができます。子どもの健やかで幸福度の高いこれからの時間のために、今からできる「自制心」を高めるための取り組みをはじめてみましょう。

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