レッジョ・エミリア・アプローチとは?3つの特徴と、メリット・注意点について

今モンテッソーリ教育と並んで、注目されている「レッジョ・エミリア・アプローチ」という教育法を聞いたことがありますか?

「世界で最も前衛的」とも言われ、注目されている幼児教育のひとつです。1991年、アメリカの『ニューズウィーク』に取り上げられたことをきっかけに、広く知られるようになりました。この記事では、レッジョ・エミリア・アプローチの教育理念や教育内容の特徴、メリットや注意点について具体的に解説します。

目次

レッジョ・エミリア・アプローチとは

まずは、レッジョ・エミリア・アプローチの教育内容を具体的に解説します。

一般的な幼児教育と異なる教育法

レッジョ・エミリア・アプローチで重要な考えのひとつが、「子どもの可能性を奪わない」という考えです。子どもが元々もっている能力や価値観を大人が制限せず、グループ活動などを通じて、自由に十分に伸ばしていけるよう関わっていくのがレッジョ・エミリア・アプローチと言えます。

そのためレッジョ・エミリア・アプローチでは、一方的に保育者や教師が何かを教えたり、決まったカリキュラムを進めることは行いません。子どもが自分で考え、自分で決め、他者と協同し合って達成しながら、活動が進められていきます。

また、「アート」が重要視されていることも一般的な教育法と異なる点です。アートといっても芸術的なセンスだけを指すのではありません。アートに関する活動は、自由に表現することを通して、創造力や表現力を育むことも指します。さらに表現するにあたって生じる他者と自分の関わりを学ぶことも含まれ、アートを通して子どもの社会的な可能性を広げる働きかけをします。

レッジョ・エミリア・アプローチを語る上では、アート、自己表現、創造力、自主性、共同性といったキーワードが挙がります。

3つの教育理念

レッジョ・エミリア・アプローチには、活動の軸となる3つの教育理念があります。

社会性4~5人のグループを作り、意見を出し合いながら作業をする。
これによって、互いの意見を尊重するなどの社会性が身につく。
時間決まった時間割がなく、子どもたちのペースで学ぶ。
時間を制限しないことで、創造力や好奇心を十分に発揮し、長期的な取り組みも可能になる。
権利子どもが安心して主体的な活動を行えるよう、否定せず、子どもを受け入れることで
子どもの成長につながる。
レッジョ・エミリア・アプローチ 3つの教育理念

「社会性」「時間」「権利」の3つが守られることで、子どもの個性を引き出すことができるとしています。これらの教育理念は、次から紹介する具体的な活動内容に反映されています。

レッジョ・エミリア・アプローチの背景と提唱者

レッジョ・エミリア・アプローチの背景と提唱者

レッジョ・エミリア・アプローチは、イタリア北部にある「レッジョ・エミリア市」で始まりました。

その歴史は古く、第二次世界大戦にさかのぼります。戦争で壊滅的な被害を受けたレッジョ・エミリア市は、終戦後「戦争の悲劇を繰り返さない人間を育てよう」と、街主導で公立幼稚園をつくりました。

この幼稚園が実施していく教育法こそが、後に「世界で最も前衛的」と言われるようになるレッジョ・エミリア・アプローチです。そのとき、重要な役割を担った人物が教育家のローリス・マラグッツィ(Loris Malaguzzi)氏です。

彼の考えは「子どもたちの100の言葉」として残されています。彼は「子どもは生まれながらにして、無限の可能性を持っている」と考えました。そして、子ども一人ひとりが持つ能力を教育によって「奪わない」ことが重要と考えたのです。

彼が重視した「子どもの生まれながらにして持っている個性・能力・考え方・感性を奪わずに伸ばす」という考えを元に生まれたのが、子どもが主体的に活動し、個々の能力を伸ばすことを重視したレッジョ・エミリア・アプローチです。

モンテッソーリ教育とのちがい

モンテッソーリ教育は、第一次大戦後に始まった教育法です。

同じくイタリア発祥の教育法で、こちらも「子どもに適切なサポートをして、可能性を伸ばす」教育法として知られています。レッジョ・エミリア・アプローチとモンテッソーリ教育の大きな違いは、カリキュラムです。

モンテッソーリ教育では、子どもたちは縦割り保育の中で、決まったカリキュラムがあり体系的な学びが用意されています。子どもの発達段階に合わせて用意された学びを、子ども自身が主体性を持って取り組みます。

一方、レッジョ・エミリア・アプローチでは、保育者と子どもが一緒にカリキュラムを作っていきます。細かいルールがなく、子どもの興味関心を活動の中心にしているのが特徴です。

レッジョ・エミリア・アプローチの特徴

レッジョ・エミリア・アプローチの特徴

ここからはレッジョ・エミリア・アプローチの具体的な活動内容を解説します。

  • プロジェクト活動
  • アトリエスタ、ペダゴジスタの存在
  • ドキュメンテーション

これらの特徴についてひとつずつ見てみましょう。

プロジェクト活動

プロジェクト活動は、レッジョ・エミリア・アプローチの中心的な活動です。

これは、少人数のグループで興味関心のあることを探求していく活動のこと。プロジェクト活動には保育者や教師が決めたゴールはなく、子どもたち同士が対話を重ね、アイデアを出し合い、子どもたち自身で実践していきます。プロジェクトの期間は決められておらず、数日で終わることも、長ければ1年単位で続くこともあります。重要なのは子どもたち自身が、納得のいくまでテーマについて掘り下げることとしています。

保育者や教師は教えることをせず、寄り添って、会話を重ねながら、子どもたちと体験を共有します。プロジェクト活動には、保護者、地域の人々、専門職の方が関わることもあり、これによって社会性や交渉力が育っていきます。

アトリエスタ、ペダゴジスタの存在

アトリエスタは「造形美術の専門教師」、ペダゴジスタは「教育専門家」のことです。

アトリエスタ(造形美術の専門教師)とは

アトリエスタはアートを専門的に学んだ教師を指します。

アトリエスタは、園内の「アトリエ」と呼ばれる場所にさまざまな道具や素材を準備しておき、子どもたちが自由に活動できる環境を整えます。レッジョ・エミリア・アプローチでは、アート活動を重視していることも特徴のひとつです。アートを通して創造的な体験をし、考える力や表現する力を伸ばすことを目的としています。

ペダゴジスタ(教育専門家)とは

ペダゴジスタは、教師や保育者とは異なる教育専門家です。

子どもや保育者、教育者、保護者、地域の人々との懸け橋的な役割を担っています。教師やアトリエスタと共に、教育内容の研究や教材の選定を行ったり、親と教育現場とのビジョンの共有をしたりすることもその役割です。ただし彼らは、子どもに教えたり指示したりはしません。レッジョ・エミリア・アプローチにおいては、これらの教師も保護者も地域の人々も、子どもも、みな対等な立場にいます。

専門教師の役割は、適切なサポートです。みんなが対等な関係で「学び合う」ことで、子どもの個性や意思が守られています。

ドキュメンテーション

活動の過程を記録したものが「ドキュメンテーション」です。

レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもたちが自主的な活動を通して「どんな結果を得るか」より「どんな過程を経たか」を重視しています。その過程を記録するのが、ドキュメンテーションの作成です。

ドキュメンテーションは、プロジェクト活動などにおける子どもたちの発言や行動を、写真・メモ・動画などで記録します。記録したものを展示したりすることで、子どもたちにとってのフィードバックになり、保護者との情報共有にもなります。子どもたちは活動を通して、創造性や社会性を獲得することが期待できます。レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもたちが獲得するものだけが教育のゴールではありません。

答えが決まっていないことに対して、どうアプローチするのかを自分たちの力で模索することで、「答えのない問題に立ち向かう力」を育てているとも言えます。この過程を重視する点が、ドキュメンテーションの作成にあらわれています。

レッジョ・エミリア・アプローチのメリット

レッジョ・エミリア・アプローチのメリット

レッジョ・エミリア・アプローチにはさまざまなメリットがあります。子どもの自主性を重視した教育法によって、以下のようなメリットが期待できます。

  • 美術を通して創造力を磨く
  • コミュニケーション能力・交渉力の向上
  • 表現力を高める

これらのメリットについて、1つずつ解説します。

美術を通して創造力を磨く

レッジョ・エミリア・アプローチでは、アトリエスタなどがさまざまな素材を用意し、子どもたちが自由に表現できるようにしています。

施設の空間は、各教室から「アトリエ」が連続する作りです。アトリエは表現活動をするための空間で、葉っぱなどの自然物、金属など部品、廃材、画材などの素材や道具が準備されています。時間や決まったカリキュラムがないこともあり、子どもは制限を受けることなく創造力を発揮できるのです。

コミュニケーション能力・交渉力の向上

主となるプロジェクト活動は、子どもたち自身で意見を言い合い、目的を達成するための手段を考えながら、作業を進めていきます。「相手に自分の意見を伝える」「相手の意見を聞く」「自分の意見を通すために相手を納得させる」など、グループで活動するからこそ、相手とうまくいく方法を考え、周りを説得する手段が身につきます。

表現力を高める

アートやプロジェクト活動を通して、子どもたちは自分を表現する手段を獲得していきます。子どもたちは自分の考えや意見を制限されることなく、自由にそして豊かに表現力を高めていけるのです。自分を表現することは、その先にある他者との関わりにもつながります。自己を表現することが社会性や協調性にもつながっていくのです。

レッジョ・エミリア・アプローチを取り入れる注意点

子どもたちにとって魅力的なレッジョ・エミリア・アプローチですが、メリットがある一方、注意点もあります。自由度の高い教育法だからこそ、次のような注意点が挙げられます。

  • 教師の役割が大きい
  • 環境を整えづらい

これらについて解説します。

教師の役割が大きい

レッジョ・エミリア・アプローチでは、アトリエスタやペダゴジスタのように、専門的な知識を持った教師が必要です。教えるのではなくサポートを通して、適度な距離で関わり、子どもの興味関心を豊かで実りあるものにしていくには、教師の技術は必須です。

しかし、レッジョ・エミリア・アプローチの理論を理解し、正しく現場に落とし込める教師は、まだそう多くはありません。専門的な技術を持つ教師の役割が大きいからこそ、質の良い教師の確保などが問題点となります。

環境を整えづらい

レッジョ・エミリア・アプローチでは教育をする「空間」も重要視されています。

園内には子どもたちが安心して自己表現ができるよう、アトリエやピアッツァ(共同広場)が設けられているのが特徴です。ピアッツァから各教室・アトリエへ続くように設計されている空間は、子どもたちが表現をしやすいように配置されたものであり、、アトリエスタなどの専門家が子どもたちの表現をサポートする教材や資材を適切に準備しておきます。これらの環境を一から整えることは、容易ではありません。さらに、レッジョ・エミリア・アプローチでは親や地域の人々との連携も重視されています。しかし、いざ実践するとなると、親や地域社会とのつながりや深い理解を得ることが難しいケースもあります。

グーグルやディズニーで働く親が熱望したレッジョ・エミリア・アプローチ

グーグルやディズニーで働く親が熱望したレッジョ・エミリア・アプローチ

世界的な注目を集めているレッジョ・エミリア・アプローチ。

この教育法は、グーグルやディズニーの附属幼稚園でも採用されています。導入のきっかけは、レッジョ・エミリア・アプローチを知った親たちが導入を強く希望したからだそうです。アートや創造性を重視した教育法だからこそ、クリエイティブな職に就く親から支持されているのかもしれません。

まとめ

メソッド自体に決まったものがないため、園によっても取り組みが変わるのがレッジョ・エミリア・アプローチの特徴のひとつです。自由度の高い教育法ゆえ、教育理念などをしっかり理解しておく必要があるとも言えます。

家庭で実践する場合は、親が子どもと対話を重ね、子どもが興味を示すものを探して、一緒にテーマを決めて、親と共にプロジェクト活動をしてみるのも良いでしょう。プロジェクト活動ができれば、子どもの発言をメモしたり、動画に撮ったりして、ドキュメンテーションを作成することもできます。変化の多いこれからの社会だからこそ、「正解のない問題」に挑んでいくレッジョ・エミリア・アプローチを正しく参考にしたいですね。

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