【幼児期から始める】子どもの読解力を鍛えるために家庭でできるトレーニング方法
ここ数年「子どもの読解力が低下している」という話をよく耳にしますが、そもそも読解力を高めるとどんなメリットがあるのでしょうか。今回は、読解力が低下している原因は何なのか、読解力を高めるトレーニングについても解説していきます。
読解力とは
文部科学省は、読解力を次のように定義しています。
自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力。
PISA調査における読解力の定義 – 文部科学省 –
これからの時代を生き抜くために必要なスキルとして、文部科学省では、文章だけでなく、図や表まで幅広く理解できることが大切だと考えています。そして、得た情報を自分の中に落とし込んでよく考え、正しく評価し、活用する「PISA型読解力」の向上を推進しています。
これまで一般的に「読解力」は、文章を読んで内容を理解し解釈することだと考えられていました。しかし最近では、文章を読み解くことに加え「相手の置かれている状況や心情、また伝えたいことを把握し理解すること」という意味合いも含んだ解釈が必要だと言っています。
読解力は、学習だけでなく、日常生活や仕事などのさまざまな場面で使われるスキルとなっているのです。
日本の子どもたちの読解力は低下しているのか
最近では、最新のニュースや必要な情報は、スマートフォンなどによるデジタルデバイスで、短い文章にわかりやすくまとめられていることが多いですね。
情報を簡単に得られるようになった今、新聞を購読して、毎日じっくりと活字を読む時間を過ごしている家庭は減ってきています。
「文字を読む」という機会が減ったことへの対策として学校では読書タイムが設けられたり、子どもたちは保護者から「この本を読むと良いよ」などと勧められる機会も増えています。そうした中で、日本の子どもたちの読解力は、世界から見るとどの程度のレベルなのか見ていきましょう。
諸外国に比べて低かった日本の読解力
世界中の15歳の子どもたち約60万人を対象に、OECD(経済開発協力機構)が3年に1回行う「PISA(学習到達度調査)」と呼ばれる学力に関する調査があります。
数学や科学の活用能力、読解力の3つの分野の学力について行われる調査です。
日本の読解力のランキングは
2012年 | 4位 |
2015年 | 8位 |
2018年 | 15位 |
という経過を辿ってきました。第1回の調査から、数学と科学は世界トップクラスを維持してきましたが、読解力については諸外国に比べて順位が下がってきているのが現状でした。
2022年日本はトップレベルの読解力に
新型コロナウイルスの影響で予定より1年延期となり、2022年に4年ぶりに実施された調査では、世界中の15歳の子どもたち約69万人が参加し、日本からは約6000人の高校1年生が参加しました。
その結果、これまで課題とされてきた読解力は2018年の15位から3位に改善され、数学的リテラシーは6位から5位に、科学的リテラシーは5位から2位という好成績で、日本は世界トップレベルとなりました。
今回の結果について、文部科学省はコロナ禍での休校期間が他国に比べて短かったことや、学校の授業での取り組みが進んだこと、そしてICT環境の整備が進み、パソコンで受けるPISAの試験に慣れたことが影響したとみています。
子どもの読解力が低下していた理由
子どもの読解力が低下した理由には、近年の家族の在り方やスマートフォンの普及が大きく影響しているようです。詳しく見ていきましょう。
親子間の日常会話が減少した
両親が共働きの家庭が増え、帰宅するとすぐに夕飯の準備や入浴などあっという間に就寝時間になってしまうため、親子でゆっくり会話する時間がないという家庭が多いでしょう。
つまり、親子の会話の中で、知らなかった初めての単語に出会うチャンスや相手の話す内容を頭の中で整理するなどのスキルを身につける機会が減っているのです。
また、親が帰ってくるまで友達とも遊ばず留守番をしている子どもは、友達と上手く会話できないというケースもあります。親子や友達との会話の量が減っていることは、読解力の低下に影響しています。
SNSなどによる短文や略し言葉のやり取りが増加
LINEなどのSNSの普及によって、短い文章でのやり取りでも意味が通じれば会話が成り立つようになり、そうした会話方法が当たり前の世の中になりました。また、了解のことを「りょ。」と表現するなど、略し言葉を使う頻度も増えています。
最近の子どもたちは、パッと見て内容が理解できるようなわかりやすくまとまった情報の扱いに慣れる一方で、小説などの長い文章に触れる機会は減少しています。
長い文章の中から必要な情報を選ぶことや、自分が書いた文章を読み直してから相手に伝えるなどの文字とじっくり向き合う習慣がないために、単純な言い回しや表現が増え、読み取る力も育ちにくいのです。
スマートフォンやゲームなどの普及による読書習慣と活字離れ
小学生になり、ひとりで家にいることが多くなると、親との連絡手段としてスマートフォンを持つ子もいるでしょう。そして、中学生や高校生になると、ほとんどの子どもが自分用のスマートフォンを持っています。
スマートフォンで好きなアニメを観たり、オンラインゲームを楽しむなど、子どもが日常的にインターネットを使用する時間は増える一方で、絵本を読んだり、お友達に手紙を書くなど活字に触れる時間は減っています。
読解力を高めるメリット
日常生活の中で「読解力を高めたい!」と感じる機会は少ないかもしれませんが、私たちは様々な場面で「読解力」というスキルを使って生きているのです。
読解力を高めるメリットについて詳しく見ていきましょう。
情報収集能力が向上する
インターネット上には、たくさんの情報があふれているので、ふと疑問に感じたことや気になることがあれば、すぐに調べられる便利な世の中になりました。
検索エンジンで調べるとたくさんの情報が出てくるので、自分が知りたい内容に関連する情報かどうかを判断しなければなりません。読解力があれば、必要な情報かどうかを判断しながら情報収集ができるでしょう。
気持ちを読み取る力が向上する
読解力があれば、相手の話を聞きながら、何を伝えようとしているのかを読み取ることができます。内容を正しく読み取って、どこが重要な部分かを判断したり、意図を理解することは、コミュニケーションにおいて必要不可欠です。
質問されたときも、相手の意図を読み取ってから答えることで、相手が納得する返答ができます。また、読解力は自分の気持ちや要求を伝える際にも役立ちます。仕事の取引先に要望を伝えなければならないとき、読解力があれば、どのような表現でどの順番に伝えれば良いのかがわかるので、説得力も増すでしょう。
何が正しいかを見極めることができる
インターネットでは個人が気軽に発信できるようになった一方で、本当か嘘かどうかわからないような情報もよく見かけるようになりました。ある有名人のニュースを読んで驚いていたら、実はそのニュースには嘘が混ざっていたり、大袈裟に表現されたものだったという経験はないでしょうか。
嘘の情報に惑わされることなく正しい情報を集めるためには、情報を正しく読み取らなければなりません。読解力があれば、時間をかけずに、たくさんの情報の中から信憑性の低い情報を見抜き、正確な情報を見つけられます。
「情報を正しく読み取り、目的のために活用できる」というスキルは、仕事でも役に立つでしょう。
読解力を鍛えるために必要なスキルは?
読解力を鍛えるために必要なスキルを表にまとめました。
次項からは、読解力を鍛えるためのトレーニング方法を解説します。小学生から始めるもの、幼児期から始められるものに分けて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
小学生から読解力を鍛えるためのトレーニング方法
小学生から読解力を鍛えるには、どんなことをすれば良いでしょうか。今日からすぐに実施できることを紹介します。
読書習慣をつける
1日1ページでも良いので、読書習慣をつけていきましょう。
普段から本を読む習慣がない子どもは、文字の少ない本や図鑑などから始めても良いです。子どもが喜ぶジャンルの本を選び、「読書って楽しい!」と感じられることが大切です。
読めた日はカレンダーにスタンプを押したり、シールを貼ったりして、楽しみながら習慣化できると良いですね。
辞書を引く習慣をつける
読みたい本があっても、意味を知らない単語がいくつも出てきたら途中で読めなくなってしまうので、語彙力は必要不可欠です。読書中や日常会話で少し難しい表現や初めて聞く言葉があったときは、すぐに辞書を引く習慣をつけましょう。
親子で一緒に調べて「どっちが早く見つけられるかな?」とゲーム感覚で楽しむのも良いですね。わからないときはすぐに調べるという作業を繰り返すうちに語彙力は伸びていき、自分の思いを伝える際にも正確な表現ができるようになるでしょう。
音読をする
小学生の宿題には、ほぼ毎日「音読」があります。
黙読だと無意識に知らない言葉を飛ばしてしまうことがありますが、音読なら自分が読む声を聞きながら、しっかりと目で文章を追えます。一字一句読み飛ばすことなく、じっくり時間をかけて理解し、文章の大切なポイントを掴みやすくなるので文章読解力を高められると言えるでしょう。
あらすじを要約して語る
物語の中で大事な部分はどこか、何を伝えたいのかなどポイントを掴んで頭の中で整理し、要約する力をつけるには「どんなお話だったか教えて」と絵本などのあらすじを簡潔に伝える練習をしていきましょう。
あらすじを相手に伝えるのは、最初は難しく感じるかもしれません。上手く答えられないときは、「誰が出てくるお話かな?どんなことが起きたの?」と段階的に質問します。最後に子どもの回答をつなげて「こんなお話だったね」と「あらすじ」の見本として教えてあげてください。
読み聞かせをする
自分で読むことに必死になってしまう子どもには読み聞かせがおすすめです。
誰かに読んでもらうことで、子どもは物語の様子を想像する余裕ができ、初めて見る言葉にも興味を持ちやすくなります。読み聞かせの途中で「この後どうなるかな?」「どんな気持ちなのかな?」などの問いかけをしながら本を読み進めると、より想像力が育まれるでしょう。
子どもがスラスラと文字を読めるようになったら、親子で交代しながら読むのがおすすめです。これまで読んでもらっていた本を親と一緒に読めるという経験は、子どもの自信につながり、読書習慣にもつながっていきます。
幼児期から家庭でできる読解力の鍛え方
幼児期から家庭でできる読解力の鍛え方を紹介します。読解力はすぐに身につくものではありませんから、コツコツ続けていきましょう。
幼稚園や保育園での出来事を話し合う
親子でよく会話することは、読解力向上におすすめです。まずは「今日はブランコで遊んだ?」「給食は全部食べた?」というような、「はい・いいえ」で答えられるような質問から始めてみましょう。
次の段階では、「今日は誰と遊んだの?」「給食は何を食べた?」など具体的な答えを求める内容に変えていきます。「楽しかった?良かったね」と気持ちに寄り添うような会話があると、子どもは話すって楽しい!と感じられるでしょう。
読解力はもっと自分の体験を伝えたいという気持ちで「話す」「相手に伝える」ことで鍛えられます。
常に子どもの意見や気持ちを聞く
子どもは何でも興味津々で、よく「あれは何?」「これは何故?」と質問をしてきますよね。すぐに答えを言うのではなく「何だと思う?」と子どもと一緒に考える時間を設けましょう。自分で考えることや答えを出すという経験は、いろいろなものへの関心につながっていきます。
また、子どもの気持ちを尊重する場面も大切です。
うちの子はきっとオレンジジュースを選ぶだろうと答えの予想はついていても、「オレンジジュースとリンゴジュース、どっちにする?」と子どもの気持ちをあえて聞くように意識してみましょう。
自分の意見や気持ちを受け止めてくれる相手がいることで、会話が増え、読解力の向上につながっていくでしょう。
絵本や動画を見た意見を交換する
絵本を読んだあとやアニメを観たあとなどに、家族で感想や意見を話し合ってみましょう。同じ物語を読んでも、感じることは人それぞれ違います。
「どの登場人物が好き?」
「自分ならどうする?」
と子どもに質問すると面白い答えが返ってくることもあります。読むだけ、観るだけで終わらず、それをきっかけに親子の会話を楽しみましょう。
文章を書く機会を増やす
読解力を鍛えるには、文章を書く機会を増やすことが大切です。毎日の出来事を綴る1行日記は、短い文章でも取り組みやすいのでおすすめです。子ども専用のノートやペンを用意してあげると喜んで取り組んでくれるかもしれませんね。
また、お友達や家族に手紙を書いて、交換し合うのもおすすめです。自分宛てのメッセージは、子どもも喜んで読むでしょう。読んでくれる相手を想像しながら言葉を選ぶ作業は、自分の言いたいことをより正確に伝える練習にもなります。
まとめ
読解力が身につくと「何が正しい情報かを見極めることができる」「相手の気持ちを読み取る力が向上する」などのメリットがあります。子どもの頃にきちんとした読解力を身につけておれば、生涯ずっと役に立つ財産となるでしょう。幼児期から少しずつ読解力を鍛えるトレーニングを行ってはいかがでしょうか。
幼児期から「読解力」を育てるのなら、読み聞かせ、音読から
幼児期から読解力を育てるのなら、
幼稚園や保育園での出来事を話し合う
常に子どもの意見や気持ちを聞く
絵本や動画を見た意見を交換する
文章を書く機会を増やす
上記項目が大事だとお伝えしました。しかし読解力の土台を作る上で、積極的に本を読み聞かせてあげること、たくさんのお話に触れることは重要なことです。
しかし、様々な本に合わせて上記のポイントを考えて読み聞かせをするのは、家事、育児、仕事などをしながらだとなかなか難しいかもしれません。
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