主体性や発想力を伸ばす教育法「フレネ教育」その特徴とメリットを紹介します。

世界には、様々な教育メソッドがありますが、現在注目を集めている「フレネ教育」をご存知でしょうか?一人ひとりの個性や主体性を重要視した教育方法で、子どもの意欲を伸ばしやすい教育メソッドだと言えます。今回は、フレネ教育の特徴やメリットについてご紹介します。是非最後までご覧ください。

目次

フレネ教育とは

フレネ教育とは

フレネ教育とは、南フランスの小さな町で教師をしていた、セレスタン・フレネが生み出した教育メソッドのことです。フレネ教育は、それまでフランスで行われていた「大人から子どもに押し付ける教育」とは真逆で、「子どもたちが主体となって、自由な表現を取り入れる教育」だったこともあり、世界中から注目されました。

フレネ教育が生まれた背景

フレネ教育が生まれた背景の一つに、創始者であるセレスタン・フレネが、第一次世界大戦中に、戦地で毒ガスを吸ってしまい、大きな声を出せなくなってしまった、という健康上の理由があります。

大きな声が出せない状態で、教員として採用されたフレネは、当時のフランスで主流であった「大人が子どもに強制する一方的な教育」を行おうとします。しかし、子どもたちは一切興味を示しません。大きな声を出すことができないフレネは、子どもたちが自発的に学習に興味を持つよう、いろいろな工夫を始めます。このような背景からフレネ教育が生まれました。

フレネ教育の教育思想について

フレネは、「理性的共同体における人格の自己形成を目的とした教育学を、学習材と教育技術の土台の上に構築すること」が重要だとしています。

簡単に言うと

「フレネ教育は個人の成長や学びを孤立したものではなく、他者との関わりや共同体の中で行うことでより豊かなものにし、その際に適切な学習材料と教育技術を活用すること」が重要である。ということです。

フレネは、このような考えから、子どもたちの毎日の生活を観察し、必要な教材を考え、独自の学習教材や学校文集を作成しました。そして、教科書を使った一斉授業を辞め、個性化と協同化を大切にした自由な教育を確立していきました。

また、フレネ教育では、「子ども一人ひとりを尊重すること」や「子どもの興味や意欲を引き出すこと」、そして「子どもが失敗を恐れないように取り組めること」を大切に考えています。子どもたちは、友達と一緒に過ごす中で、互いの良さを認め合い、自分の思いを自由に表現するうちに、相互理解を深めていくことができるのです。

フレネ教育の特徴

フレネ教育の最大の特徴は、子どもたちが日々の生活の中で感じた興味や関心を学びに繋げていく教育メソッドであるため、一斉学習ではないことです。つまり、子どもたちは、全員同じ内容を学習しているのではなく、それぞれ自分が関心を持ったことを学習しています。子どもたちは、自分で学習の計画を立て、友達と互いに協力しながら学習を進めていくのです。

具体的に、どのような学習を行っているのかご紹介します。

フレネ教育の特徴

自由作文

フレネ教育における、学習の主軸となっているのが自由作文です。子どもたちが感じたことを、書きたいときに自由に書きます。そして、毎日の生活で感じたことや疑問を、作文や詩で表現して発表することで、自分の考えを発信し、自分の考えを言葉にする力が育まれます。

印刷機を使った教育

自由作文は、発表して終わりではありません。全員の作文の中から教師と生徒で投票し、選ばれた作文は、教科書となるのです。よりよい教科書になるよう、クラス全員で推敲を重ね、完成した作文は印刷機を使って印刷します。子どもたちは、一連の作業により、文章力が培われるだけでなく、人はそれぞれ違う価値観を持っていることに気付くことができます。

また、「自分が書いた作文が教科書になるかもしれない」というのは、子どもたちにとって大きなモチベーションとなり、自信に繋がります。

学校間通信

フレネ教育では、自由作文を用いて、他の学校と交流します。同じクラスの友達という身近な存在だけでなく、今まで出会ったことのない人にも自分の文章を読んでもらうことで、子どもたちは、書く意欲がさらに増します。また、学校間通信を行うことで、個人の思いを表現することはもちろん、そこから生まれる互いのコミュニケーションによって、子どもたちの自己表現力やコミュニケーション能力が鍛えられていきます。

教科書・授業のない教育

フレネ教育には、教科書や授業はありません。子どもたちは、自分の能力やペースに合わせて、自分なりに学習を進めていきます。教室には、誰でも理解できるような教材や子どもたちが自分で学習評価ができるような道具が用意されています。子どもたちは、それらを用いて、1週間から2週間程度の学習プランを自分で立て、必要な課題に取り組んでいくのです。主体的に学習を進めることで、計画性や探求心が育っていきます。

対話による学びを深める

フレネ教育では、個人での学習を通じて学んだことを、全体に共有する場が意図的に設けられています。自由作文の発表以外にも、朝の会や帰りの会で、自分が学んだことについて議論する時間があったり、「コンフェランス」と呼ばれる親との共同の学びの場が設けられたりしています。議論を重ねる経験をすることで、子どもたちは、どのように相手に思いを伝えればいいかを学ぶことができます。また、他者の意見を聞き、自分の意見を振り返るきっかけとなるため、対話を通して、さらに学びを深めたり、コミュニケーション能力を培ったりしていきますよ。

アトリエにおける活動

アトリエは、子どもが興味のあることに対して、じっくりと取り組むことができる環境が整えられた場所のことです。子どもたちは、絵画や版画、そして演劇やダンスなどといった創作をアトリエで行い、物事に関する興味関心をさらに深めていきます。

フレネ教育のメリット

フレネ教育では、子どもたちが自分で考え、行動することを大切にしています。フレネ教育を受けるメリットを具体的にご紹介します。

主体性を持って勉強に取り組む

フレネ教育を受けることで、自分で考え、勉強に取り組むことができるようになります。教師から指導され、みんな同じ教材、時間割で学ぶのではなく、自分で学びたいことを見つけて、自分で目標を立てるからです。目標達成に向けて、自分のペースで学習を進めていくことができるため、主体性を持ち、興味関心のある事柄についての学びを深めていくことができます。

思いやりを持つ子どもに育つ

フレネ教育では、異年齢の子どもたちでクラスが構成されていることも多いので、お互いへの思いやりの気持ちが育ちます。分からないところを教えたり、教えてもらったりし、共に学ぶ中で、年長者への憧れの気持ちも芽生えます。

個性を尊重することができる

フレネ教育の学習の主軸である「自由作文」を通して、自分の意見を相手に伝えることや他者の思いを聞く経験を重ねていきます。その中で、人には自分と違う考え方や思いがあることを知り、相手のありのままの気持ちや生まれ持った個性を尊重することができるようになります。

コミュニケーション能力を育む

フレネ教育では、友達同士で意見の交換を行う場面が多いため、自然とコミュニケーション能力が育まれていきます。「自分の考えをどのように話せば、相手に伝わるのか」、「自分と違う考えの相手に対し、どのように関わっていくのか」ということを、日頃から考える機会が多いので、相手との対話を通し、コミュニケーション能力と共に、思考力も磨かれていくのです。

フレネ教育は家庭でも実践できるか

フレネ教育は家庭でも実践できるか

フレネ教育は、家庭でも取り入れることができます。

例えば、フレネ教育の主軸である「自由作文」のように、自分の思ったことや感じたことを文章で書く習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。まだ、文字を書くのが難しいお子様なら、絵でも構いません。自分の思いを文字や絵で表出し、それについて話す機会を作ることで、気持ちを伝える楽しさや、共感してもらう嬉しさを感じることができますよ。

また、フレネ教育の大きな特徴は、子どもたちが興味関心のあることについて、自主的に学ぶことです。親が子どもに一方的に与えるのではなく、子どもが今何に興味があり、どんなことに関心があるのかを見極め、見守ることを大切にしましょう。「もっとやってみたい」、「もっと知りたい」と子どもが意欲的に感じているときには、絵本や図鑑を用意したり、一緒に経験したりし、子どもが学ぶための環境を整えてあげることが大切です。

日本でフレネ教育を導入している学校・幼稚園

フランスで生まれたフレネ教育ですが、現在は日本でもフレネ教育を導入している学校や幼稚園があります。

箕面こどもの森学園(大阪府)

箕面市で認定NPO法人コクレオの森が運営している、箕面こどもの森学園。箕面こどもの森学園では、生きていくために必要な読み書きや計算はもちろん、自分の思いを伝えるために必要な表現も授業の中で伝えています。対象は、小学1年生から中学3年生の子どもたちです。

ジャパンフレネ(東京都)

ジャパンフレネは、「学校に行きたくない」という気持ちを抱える小学生から高校生までを対象としており、自由に学ぶことで、「学ぶことの楽しさ」に気付かせてくれる学校です。「フリースクールコース」、「算数・数学専科教室」、「おもしろ通信講座」の3つのコースから、自分に興味のあるコースを選ぶことができます。また、フレネ教育の「自由作文」、「学校印刷」、「学習の個別化」といった教育方法を実践しています。

けやの森学園幼稚舎・保育園(埼玉県)

フレネ教育と、仏教の伝統を取り入れた「自然教育」を共に行っている幼稚舎、保育園です。幼稚舎では3歳児から5歳児までを、保育園では0歳児から5歳児までを対象としています。自然と触れ合いながら遊ぶ中で、友達と協力する経験や、主体的に物事に関わって遊ぶ力を育てていますよ。けやの森学園では、フレネ教育を倣って、縦割り保育を実施しています。

まとめ

今回は、フレネ教育の特徴やメリットについて、ご紹介しました。

フレネ教育を専門的に取り入れている教育機関は、日本ではまだ多くありません。しかし、フレネ教育の考え方である「主体的に学ぶこと」や「お互いの考え方を尊重し合い、思いやりの気持ちを持つこと」は、生きていく上でとても大切な力です。乳幼児期から、自分の思いを言葉にして相手に伝えたり、また、他者には自分と違った考えがあることを知ったりすることで、互いの違いを認め合い、思いやりの心が育っていくでしょう。子どもの主体性を大切にしながら、「伝えたい」、「もっとやってみたい」という子どもたちの思いに寄り添っていきたいですね。

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フレネ教育は、「モンテッソーリ教育」「イエナプラン教育」などの教育法と同様、「子どもの才能や個性に合わせて学習できること」や、「子どもの自主性を伸ばすこと」を重視しているオルタナティブ教育のひとつです。

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