【幼稚園・保育園の選択肢】オルタナティブ教育とは?特徴やメリット注意点、7つの教育法を紹介
「子どもの個性を伸ばしたい」と考えたとき、オルタナティブ教育が気になる方は多いでしょう。オルタナティブ教育には、有名なものではモンテッソーリ教育やシュタイナー教育などがあります。いずれも「子どもの個性を伸ばす」ことや「他者との協調性を身につける」ことを重視した教育方法です。日本でもこうしたオルタナティブスクールが増えてきています。
この記事では、オルタナティブ教育やそれを提供するオルタナティブスクールについて詳しく解説します。
オルタナティブ教育とは
オルタナティブ教育は、文部科学省が決めた学校外で行われる教育のことを指します。学校教育法に縛られない非正規の教育機関が、独自のアイデアや教育方針に基づいて子どもたちに教育を提供している形です。
では、具体的にオルタナティブ教育とはどんなもので、一般的な教育施設とどんな点で異なるのでしょうか?オルタナティブ教育の定義やフリースクールとの違いについて解説します。
オルタナティブ教育の定義(文部科学省管轄の学校教育との違い)
オルタナティブ(Alternative)は「代替」を意味する言葉です。
日本では学校教育法に則って教育施設が設けられています。こうした施設は一条校と言われ、文部科学省が定めたルールの中で目的や学習内容などが決められます。これに対してオルタナティブ教育を提供するオルタナティブスクールは、学校教育法などの法的根拠を有していない非正規の教育機関のことを指します。一条校とは運営制度が異なり、各校がそれぞれ独自の理念や教育方針を持っているのが特徴です。
規定の法律に縛られないため、従来の学校ではできない新しい取り組みも可能です。そのためまさに従来の教育施設の代替となる、新しい選択肢として注目されています。
フリースクールとの違い
一条校以外の選択肢という意味では、フリースクールもあります。
フリースクールは、一般的に不登校などの理由で「学校に通えなくなった子どもが通う場所」のように、消極的な意味合いが強いです。勉強や教育相談が可能で、学校以外の選択肢として民間で運営されています。一方、オルタナティブスクールは積極的な選択肢としての意味合いが強く、幼稚園や学校の教育理念や教育内容に共感し、「この幼稚園・学校で学ばせたい」と思って選ぶケースが多いです。
オルタナティブ教育の特徴
モンテッソーリ教育などオルタナティブ教育の種類はいくつかあり、通うオルタナティブスクールによって具体的な関わり方は異なります。
ただ、多くのオルタナティブ教育に共通するのが、個性を尊重し主体的な学習ができる点です。オルタナティブ教育では、子ども自身の興味関心を学びの起点とし、自ら学びを深めていく関わり方をします。子どもの興味関心を存分に発揮させるために、時間割を設けていないことも多くあります。また、学年で生徒を分けずに異年齢の子どもと一緒に学び合うことが多いのも特徴です。その中で多様な他者との関わり合いを通して、コミュニケーション能力やリーダーシップなどを身につけます。
さらに教師は子どもに対して一方的に教えるのではなく、サポートしたり、同じ立場で学び合うといった役割に徹していることも特徴です。具体的な関わり方や教育内容はそれぞれ異なるので、気になるオルタナティブ教育があれば詳しくチェックしてみましょう。
オルタナティブ教育のメリット
オルタナティブ教育を受けるメリットには次のようなものがあります。
- 少人数制で子どもをしっかり見てもらえる
- 学習指導要領に縛られない教育を受けることができる
- 考える力がつく
- 主体性が身につく
- 縦割り教育を受けることでコミュニケーション能力や思いやりを育める
- 個性が伸びる
それぞれのメリットについて具体的に解説します。
少人数制で子どもをしっかり見てもらえる
オルタナティブ教育では、一般的に公立学校よりも少人数で活動することが多いです。そのため生徒それぞれに合わせたきめ細かい指導を受けることができます。大人数の中で主張することが難しい子や、集団行動よりも個人行動を充実させたい子にとっては、自分を出しやすい環境です。
学習指導要領に縛られない教育を受けることができる
文部科学省管轄の一条校では、必須のカリキュラムや必修の授業数などが決まっています。それによって一定の学力水準がキープされている一方、大きく逸れることができないので新しい取り組みが難しい面もあります。
これに対してオルタナティブスクールは、教育内容を柔軟性があります。学習指導要領の画一的な教育の中ではできない取り組みを、子どもたちの個性に合わせて臨機応変に行えるのが特徴です。こうしたメリットは、個性が一般的な学校では伸びない子どもや、個性が強くて学校になじめない子どもの受け皿にもなれるといった側面もあります。
考える力がつく
オルタナティブ教育では、子どもの自発的な学習を重視していることが多いです。
一条校は教師から生徒に対して一方向的に授業を行うスタイルが多くを占めます。これとは異なり、オルタナティブスクールでは、生徒が自ら学びを見つけたり、双方向的なやり取りの中で学びを深めていきます。教師が先に答えを教えるのではなく、遊びの中でうまくいく方法を考えたり、ひとつの問題についてとことん掘り下げたりといった学びの場が提供されます。
主体性が身につく
一条校の多くは、カリキュラムや学習内容が決まっており、教師から生徒へ学びが与えられます。こうした関わり方は、子どもを受け身にしてしまうことがあります。
対してオルタナティブ教育では、学びの起点が子ども自身の興味や関心です。子どもがやりたい遊びや学びからスタートするため、子どもたちが主体的に学びを主導し選択していきます。このときオルタナティブ教育の教師は、指導をするのではなくサポーター的役割を担います。教師のサポーター的な関わりや柔軟性のあるカリキュラムによって、子どもが主体的に学ぶ環境が整っているのです。
縦割り教育を受けることでコミュニケーション能力や思いやりを育める
オルタナティブ教育の多くで、異なる年齢の子どもたちが同じクラスに入る縦割り教育が行われます。遊びや学びを通して人との関わりを学ぶことで、同年齢のクラスで学ぶよりも幅広いコミュニケーション能力が培われるのです。異年齢の生徒と日ごろから接することで、協調性・リーダーシップ・思いやり・調整能力など、人と関わり合う上で必要なスキルを学べます。
個性が伸びる
それぞれの個性を尊重した関わり方をするのが、オルタナティブ教育の大きな特徴のひとつです。
そのため、時間割やカリキュラムなどの枠にとらわれずに、子どもが興味のあることに向かって没頭できる環境が整っています。これによって、子どもは十分に自分の長所を伸ばし、個性を発揮させる機会を得ることができます。また、創造的な能力を重視した教育や、自由を重視した教育など、一言でオルタナティブ教育といってもさまざまな種類があります。いくつかのオルタナティブ教育の中から、子どもにマッチするものを選べるのも、子どもの個性を伸ばすことに繋がります。
オルタナティブ教育を受ける注意点
オルタナティブ教育には次のような注意点があります。
- 学費が高い
- 卒業資格が得られないことも
- 選択肢が少ない
- 教師によって教育内容に差がある
それぞれの注意点について解説します。
学費が高い
一般的な幼稚園・学校と比べて、オルタナティブスクールの学費は高い傾向にあります。そもそもオルタナティブスクールは運営制度などがスクールによって違うため、かかる費用もスクールによって異なります。またオルタナティブ教育を提供する施設の多くが、国からの認可を受けていないため国からの補助がありません。その分学費は各家庭が全額負担することになり、一般的な教育施設に比べて高額になります。
卒業資格が得られないことも
オルタナティブスクールは私立の学校とは異なり、国から教育施設としての認可を受けていないところが多くあります。学校の卒業資格は学校教育法上の資格であり、国に認可された一条校でなければ得られません。オルタナティブスクールに通いつつ卒業資格を得る場合は、他の小中学校に籍を置いて、卒業資格だけ得られるようにするなどの方法があります。オルタナティブスクールに通う場合は、通う学校が認可されている学校かどうか、チェックが必要です。
選択肢が少ない
日本ではオルタナティブスクールがまだ少ないこともあり、幼稚園はオルタナティブスクールだったが、その先は一般の公立校しかないというケースもあります。すると、子ども自身が教育内容の違いに戸惑ってしまうこともあります。子どもが成長しても一貫した教育を受けさせたいと思っている場合は、幼稚園・保育園からその先の学校までどんな教育の選択肢があるか、一度具体的に考えてみるとよいでしょう。
教師によって教育内容に差がある
生徒に深い学びを提供するために、教師の役割は重要です。それぞれの子どもの個性に合わせて言葉を選び、子どもの思考を深め、臨機応変に学び合う場を作る必要があります。決まったカリキュラムがなく、柔軟な学びを提供している点は魅力ですが、その分教師の力量によって生徒の成長に差が出ることがあります。生徒に合ったアドバイスができるかどうかで、子どもの成長が左右される点はデメリットと言えます。
オルタナティブ教育の7つの教育法
オルタナティブ教育にはさまざまな選択肢があり、その中から子どもに合う教育を選ぶことになります。ここではオルタナティブ教育に代表される7つの教育法について、その特徴を解説します。
モンテッソーリ教育
「子どもは自らを成長・発達させる力をもって生まれてくる」という考えが前提となった教育方法です。人から教えられなくても歩くようになるなどの自己教育力を発揮するために、独自の教具を用いるなどして子どもの成長を促します。教育の目的は「自立し、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てること」としています。
シュタイナー教育
子どもが「自由な自己決定」を行える人間になり、子どもの能力を最大限に引き出すことを目的としています。人間は自然や宇宙との関係の中にあるという人智学がベースになっており、カリキュラムの中に、豊かな人格形成を目的にした芸術活動が取り入れられていたり、人工物などを使わない傾向があるのも特徴です。
ドルトンプラン教育
「自由」と「協同」の2つを理念としています。子どもが自発的に考えて取り組み、他者と交流しながら行動するための、柔軟なカリキュラムや縦割り教育が特徴です。グローバルな人材育成を目標にしていることも多く、世界で活躍できる子どもの資質を伸ばせる教育法です。
フレネ教育
子どもの個性に重点を置きつつ、集団生活の中で自分を発揮できる力を育む教育法です。実際の活動では、自分で決める活動計画表や、自分の意見を表現する自由作文があります。意見交換の場が多く設けられているのも特徴です。経験から学ぶことを大事にしていて、日常の中の経験であっても視点や捉え方を変えて、それぞれの子ども独自の経験にできるよう工夫されています。
イエナプラン教育
「自立」と「協調」の2つを軸としています。自分の長所と短所を把握して個性を発揮しつつ、他者と助け合い貢献することを目指します。対話・遊び・仕事(学習)・催しの4つの活動を基本とした学習カリキュラムを特徴とし、従来の教科にとらわれない子どもを起点とした学びをします。生徒の多様性を尊重していて、障害の有無にかかわらずそれぞれの違いを知りながら、他者に寛容になることを目指す教育です。
サドベリー教育
子どもの自由を尊重し、子どもの好奇心を尊重しながら、他人と関わり尊重し合うことを目的としています。カリキュラム・授業・宿題・テストがなく、学年という概念もありません。大人と子どもが対等で、子どもも一緒に学校の運営についても関わる点も大きな特徴です。
レッジョ・エミリア・アプローチ
「100人の子どもがいれば、100通りの個性がある」と考え、子どもが主体的に活動し、個性を発揮することを大事にしています。子ども主導の探究型教育で、アート活動や子ども数人のグループで学びを深めるプロジェクト活動に力を入れ、地域との連携を重視していることも特徴です。
まとめ
「子どものためにより豊かな学びを」と考える親にとって、オルタナティブ教育は新しい選択肢となりうる教育法です。「子どもの個性を伸ばしたい」「主体的に学んでほしい」と考えているなら、一度気になるオルタナティブ教育を調べてみるのもおすすめです。ただ、実際にオルタナティブ教育を受けさせようと考えたときに、日本ではまだ選択肢が多くないなど、考えなければいけない点もあります。
現実的な問題点も考えつつ、お子様に最適な教育方法をチェックしてみてください。
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