発達障害のある子の学習方法とは?種類別の指導法について

発達障害のあるお子様の学習方法はどのように選ぶべきでしょうか。発達障害には様々な種類・特性があるため、それぞれの発達障害の特性に応じた適切な学習方法を見つけ出すことが大切です。

本記事では、発達障害のあるお子様への学習方法について、種類別の指導法をご紹介します。発達障害のあるお子様を育てられている方や、発達障害の児童を教育する立場にいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

発達障害のあるなしに関わらず、お子様の興味・関心や発達状況は十人十色で「絶対にこれが合う」とは言い切れませんが、今より一歩先に進む手助けになれば幸いです。

この記事でわかること

発達障害のある子どもの学習方法

発達障害の種類と特性

発達障害の特性別の学習指導と配慮のポイント

目次

発達障害のある子どもの学習はどうやるべき?

発達障害のある子どもの学習方法

発達障害には特性の異なる複数の種類がありますので、それぞれの特性に合った適切な学習方法と指導方法を見つけることが大切です。まずは、発達障害とは何かどんな種類があってどんな特性があるのかを理解しましょう。

発達障害という大きなカテゴリで学習指導を行うのではなく、特性に応じた環境の整備や適切なコミュニケーションの確立適度なサポートの提供などが必要です。

発達障害の種類と特性

ここでは、発達障害の主な種類と特性について詳しく解説します。

自閉スペクトラム症(ASD)の特性

自閉スペクトラム症(ASD)は、「自閉症」や「広汎性発達障害」、「アスペルガー症候群」など様々な名称で呼ばれてきましたが、現在はこれらの症状をまとめて「自閉スペクトラム症」と表現されています。

主な症状は、コミュニケーションが苦手、自分の意思を伝えたり相手の気持ちを汲み取ることが苦手、思い通りにいかないと感情が乱れやすいなどが挙げられます。その他、ある特定のことに強い関心(執着)を持ちやすいなどの特性があります。

学習障害(限局性学習障害)の特性

学習障害(限局性学習障害)は、読み書きや計算、言語理解など、特定の学習において問題がみられる発達障害のひとつです。学習障害には、読字の障害・書字の障害・算数の障害の主に3つのタイプがあります。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性

注意欠陥多動性障害(ADHD)は、注意力の持続が困難、考えるよりも先に動き出す衝動性、じっとしていられない多動性などの特徴をもつ障害です。

注意力が乏しいと思われがちですが、様々なものに関心を抱きやすく、エネルギッシュであらゆるものに取り組む特性もあります。一方で、落ち着きがなく忘れ物が多いなどの特徴がみられ、叱られることが増えるにつれ自信を失ってしまうことがあります。

チック症や吃音障害

チック症や吃音障害も、発達障害のひとつです。

チック症とは、本人の意思に関係なく、まばたきや首振りを繰り返す疾患であり、症状が現れる直前にはその動きをしたいという強い衝動に駆られるといわれています。はっきりとした原因は解明されていませんが、脳内神経伝達物質の偏りではとされています。

 また吃音障害とは、言葉がスムーズに出てこない発話障害のひとつです。吃音障害は、単に言葉が詰まるだけではなく、言葉を引き伸ばして発音したり、言葉を出せずに間が空いてしまうなど複数の症状があります。吃音障害の原因は、体質や環境などが影響して発症する発達性吃音と、神経学的疾患や心的ストレスなどの獲得性吃音があり、これら様々な要因が吃音を発症していると指摘されています。

発達障害の特性別の学習指導と配慮のポイント

発達障害のあるお子様の学習は、種類と特性に合わせた適切な方法で指導することが非常に重要です。ここでは、発達障害の特性別の学習指導について、配慮すべきポイントを解説します。

自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもへの学習指導

自閉スペクトラム症のあるお子様は、コミュニケーションが苦手な傾向があります。意思の伝達だけでなく、相手の表情やジェスチャーから考えを読み取ることも難しく、それにより感情が乱れることがあります。

学習指導では、複雑な表現を避け、「◯◯をしようね」「◯◯をしてね」といったシンプルな伝え方が適切です。また、言葉だけでなく、イラストなどの視覚的な手段を使って伝えることで、こちらの意図を理解しやすくなります。また自閉スペクトラム症のある子は、新しいこと・知らない環境などに不安を抱きやすい特性がみられます。そのため「新しく挑戦することは手順を示しつつ少しずつにする」というスモールステップでの支援も効果的とされています。

学習障害(限局性学習障害)のある子どもへの学習指導

話すことや言葉を理解することはできるものの、読み書きや計算ができない限局性学習障害のあるお子様への学習指導は、本人が読字の障害・書字の障害・算数の障害のどの種類に該当するかを把握した上で、適切な指導を行うことが大切です。

読字が苦手な子は、タブレットなどの音声読み上げ機能を活用する方法がオススメです。

また書字が苦手なお子様には、ペンではなくパソコンのキーボードでタイピングを教えてあげたり、算数障害のある子は、可能であれば電卓を活用するなどが挙げられます。

基本的な学習指導の方針は、得意な部分は積極的に褒めて、進めましょう。苦手なことに関しては、上記のように課題の量や難易度を適切に加減するなど、学習能力に応じて柔軟な教育指導をとることが重要です。

注意欠陥多動性障害(ADHD)のある子どもへの学習指導

注意欠陥多動性障害のあるお子様は、集中力が持続しづらい傾向にあります。そのため、身の回りに不要な物を置かないなどの学習に集中できる環境づくりが大切です。またADHDのあるお子様は、イラストや図を用いることで勉強を理解しやすいといわれていますので、タブレットやパソコンや自作の図表等で視覚的アプローチによる学習法が効果的とされています。

ADHDのあるお子様は、発達障害のことをよく知らない大人から「まじめじゃない」「ふざけている」など叱られて悲しい体験をしている可能性があります。「失敗しても気にしなくていい」と優しく語りかけるなど、お子様にとって居心地のいい環境づくりを含めた心のケアに取り組むことも大切です。加えて、お子様が学習に集中しようと努力するなどの適応行動がみられた際は、こまめに褒めることでさらなる学習意欲の向上につながります。

チック症や吃音障害のある子どもへの学習指導

チック症や吃音障害のあるお子様たちへの学習指導でも基本となるのは、理解とサポートです。

チック症のあるお子様には、身体的な動作制御に取り組む必要性はありますが、その動作を受け入れてあげることが前提にあります。「我慢しなさい」「その動きをやめなさい」と否定する態度は、かえってお子様を萎縮させ、ストレスを与えてしまいます。チック症の症状が現れた際は、そっと体を撫でてあげるなど受け入れる姿勢をみせてあげましょう。

吃音障害のあるお子様は、言語コミュニケーションの困難を抱えていますので、リラックスした雰囲気や環境を整え、またお子様のペースに合わせることが重要です。お子様の話す言葉に耳を傾け、急がせずお子様の話が終わるまでじっくり待ってあげてみてください。それにより、自己肯定感および学習意欲の向上、また積極的な周囲との関係構築などに繋がります。

まとめ

今回は、発達障害のあるお子様の学習方法について、種類や特性別の指導法を中心に解説しました。一人ひとりの症状や特性を理解して受け入れてあげて、褒めて認めて励ましてあげながら、適切な方法で進めることが重要です。

私達が子どもだった頃に主流だったのは「紙に書く」勉強方法ですが、現在はパソコンやタブレットなどデジタル支援ツールが数多くあります。

活用できるものは積極的に試し、お子様に合った学習方法を探してあげましょう。

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