子どもの記憶力をアップさせる「分散学習」という効果的な学習方法について
勉強している子どもを観察していると
などと感じることはないでしょうか?いくら勉強しても学習内容を身につけることが出来ないと、親は今のままの勉強方法でいいのか、もっと勉強方法を増やすべきなのか、色々考えてしまうのではないでしょうか。しかし覚えが悪いからと言って、がむしゃらに勉強時間を増やすのはおすすめしません。記憶力をアップさせるためには、覚え方のコツをおさえることが大事です。
記憶力をアップさせるおすすめの勉強法のひとつに「分散学習」という方法があります。分散学習は人間の記憶のメカニズムを利用した学習法です。この記事では分散学習のメリットや取り入れる際のポイントについて詳しく解説します。
記憶力や集中力が続かないのはワーキングメモリーに問題があるかもしれません。ワーキングメモリー不足はトレーニングによって改善することが出来ます。
分散学習とは
分散学習は復習に重点を置いた勉強法です。勉強をいくつかにわけて分散させ、内容を繰り返すことで記憶の定着を図ります。
効率的な勉強ができる分散学習ですが、そもそも「分散学習」という言葉を初めて聞いた方もいるでしょう。ここでは分散学習の特徴や、また他の学習方法との違いについて解説します。
分散学習の特徴
いくら一生懸命勉強しても、学んだ内容をそのままにしているとそのうち忘れてしまいますよね。反対に一生懸命覚えたわけでもないのに、日常的に使う知識や頻繁に目にする情報は自然と記憶に残ります。
こうした人間の記憶の仕組みを利用しているのが分散学習です。
分散学習のポイントは「適切なタイミングで復習する」ことです。単に毎日繰り返せばよいのではなく、効率的に勉強するためのタイミングや回数をおさえることが重要なポイントです。
分散学習と集中学習の違い
分散学習の対になるのが、集中学習です。集中学習は、一気に集中して勉強内容をインプットする学習方法です。トータル60分間勉強するなら、1度に60分の勉強をしてしまうのが集中学習の勉強の仕方です。
対して分散学習は、学習をいくつかに分散させます。同じく60分勉強する場合、1日目に20分、2日目に20分、5日後に20分のように学習内容や時間を分散させます。
集中学習 | 分散学習 | |
1日目 | 60分 | 20分 |
2日目 | 0分 | 20分 |
5日目 | 0分 | 20分 |
どちらもトータルで勉強した時間は同じですが、集中学習は一度に終わらせているのに対し、分散学習は勉強時間や勉強内容を複数に分けています。このそれぞれの学習方法で得られる学習効果は大きく異なり、記憶力という点で言えば分散学習の方が学習効果が高いです。
「じゃあこれからは分散学習で勉強させた方がいいんだ!」と思うかもしれませんが、そうではありません。後述しますが、集中学習にもメリットがあります。取り入れる場合にはそれぞれのメリットを理解した上で、使いどころを間違えないようにしましょう。
分散学習と集中学習の実験
2008年にニコラス・セペダという研究者のもとで行われた分散学習と集中学習の実験によると、総勢1,354名が被験者として参加し、復習のタイミングによる定着率の影響を調べた実験で、結果として「試験までの期間の20%程度の時間が経過したときに2回目の学習をする」タイミングが効果的とまとめられています。
20%とは具体的には次のようなタイミングです。
復習するタイミング | |
1週間後に試験がある場合 | 最初に学習した1~2日後に復習 |
1ヶ月後に試験がある場合 | 最初に学習した1週間後に復習 |
半年後に試験がある場合 | 最初に学習した3週間後に復習 |
1年後に試験がある場合 | 最初に学習した1カ月後に復習 |
例えば1週間(7日)なら7の20%で7×0.2=1.4なので、復習するタイミングは1~2日後となります。この実験では、1回目の勉強と復習の間をあけず一気に行う「集中学習」の場合は最も学習効果が悪いという結果が出ました。
ただし、この実験は1度だけ復習するケースを想定しています。実際には小テストの後に、単元テストで同じ内容を問われるなど、記憶定着のゴールは1回のテストに限りません。そのため学習内容をより長期的に定着させるとしたら、何度か復習をしてより一層の記憶の定着を図る必要があります。
長期的に記憶を定着させるとしたら、一度目の復習は翌日、次は1週間後、次は2週間後、次は1カ月後のように、スパンを長くしながら復習していきましょう。
いずれにしても、記憶を定着させるのに集中学習は向いていません。効率よく記憶力を上げるためには、インターバルを置いて学習する分散学習の方が適していることがわかります。
分散学習のメリット
適切なタイミングで復習を繰り返すのが分散学習の特徴でした。それではこの分散学習を取り入れることで、子どもにどんなメリットがあるのでしょうか?分散学習を導入するメリットについて詳しく見てみましょう。
記憶が定着しやすい
人は「忘れる生き物」と言われる通り、全ての記憶を覚えておくことはできません。分散学習はがむしゃらにインプットを繰り返して覚えるのではなく、定期的に記憶の点検をしながら効率的なインプットをします。
人の記憶のメカニズムに基づいているので、やみくもに勉強するよりも記憶が定着しやすいのです。
また、学習を分散すると「思い出そうすると作業」が増えます。「あ、この漢字この間覚えたなーなんだったっけ?確かこんな形で…」のように、記憶を引き出す作業が増えるのです。一般的に脳は、インプットしているときより、記憶したものを使おうとしたときの方が記憶に残りやすいと言われています。
集中学習では最初に記憶したものは、後半になると「うん、これはさっき覚えたやつだな」と記憶をなぞるだけの確認作業になってしまいます。対して分散学習では、頑張って記憶の中から引き出そうとするので、思い出す作業が増えて記憶が定着しやすいのです。
モチベーションを保ちやすい
たとえ好きなことでも、長時間連続して取り組んでいるとやる気が低下していきますし、集中力には限界があります。よほど好きなことでない限り1つのことに集中し続けるのは難しいです。ずっと勉強していたら飽きてしまって、いくらやっても内容が全然頭に入っていないということもよくあります。
これは大人でも子どもでも同じですよね。分散学習の場合、1回あたりの勉強が短時間で終わります。同じ内容をダラダラと勉強する必要がない分、子どもの集中力が続きやすいです。
勉強内容が多いときには、小休憩をはさみながら取り組むことも有効です。その場合でも、分散学習では勉強をいくつかに分けて短時間の勉強を何度か繰り返すことになり、子どもにとっては目先が変わるため飽きにくいです。分散学習は勉強へのマイナスイメージを抱きにくく、1回あたり短時間で済むので勉強のハードルがぐっと低くなります。
そのため、勉強へのモチベーションを保ちやすく継続しやすいのです。
毎日勉強する必要はない
分散学習は復習の回数やタイミングに重点を置いているので、必ずしも毎日勉強する必要はありません。「全然覚えられないから」と毎日集中的に知識を詰め込んでいては、時間が足りませんし、追い込まれてやる気もなくなってしまいます。
分散学習は効率的な復習計画の下に勉強を進めます。毎日勉強することよりも、ベストなタイミングで復習をすることの方が重要なのです。
分散学習方法を取り入れるポイント
分散学習は特別に用意するものもなく、すぐに始められる学習方法です。それでは実際に分散学習を取り入れるとなったら、どんな点に注意するべきなのでしょうか?ここからは分散学習を実践する際のポイントを解説します。
復習するスパン・タイミングを決めておく
分散学習は、復習のタイミングが重要です。復習のタイミングが短すぎると、知っている内容をなぞっているだけになってしまうので効果が薄まります。逆に復習のタイミングが長すぎると、学習した内容を忘れてしまって、また1からインプットし直すことになってしまいます。
復習するベストなタイミングは「忘れかけたタイミング」とされています。
ただ、復習するスパンは個人の記憶力によっても異なりますし、勉強している内容によっても異なります。例えば、子どもが苦手な分野の勉強をするときには、覚えにくく忘れやすいです。そのため最初は短いスパンで復習する必要があるでしょう。
復習するスパンやタイミングは、子どもの様子を見ながら徐々に期間を延ばしていくと良いでしょう。それでも勉強に慣れていないと「子どもに合った復習のタイミングがわからない…」という場合もあります。そんな場合には、分散学習のタイミングを通知してくれるなど、学習をサポートしてくれるアプリがありますので、アプリを活用するか、自身でアラームを設定しておくのも効果的でしょう。
ゴールを決める
記憶を定着させるためには何度も復習することが大事ですが、勉強をしていくほどに復習するべき内容は増えていきます。増え続ける勉強内容に対して、ずっと復習を続けていると時間が足りなくなってしまいますよね。
そこでいつまで復習すればいいのか?というゴールはあらかじめ決めておきましょう。例えば「問題を5回正解できたらもう復習しない」や「学期末テストで正解したらとりあえず次の単元にうつる」などです。このようなゴールを決めておかないと、勉強内容は増える一方で子どものやる気は削がれてしまいます。
正解数などは多ければ多いほど良いということではありません。「正解数は合計5回」がよく、6回以上はテストの成績が変わらないという実験結果もあります。5回程度を目安に、先に復習の区切りを決めておきましょう。
休憩をとる
勉強には集中力が重要ですが、特に子供の集中力は長くは続きません。下記の記事内の「年齢別に見る子どもの集中力が持続する時間」でも記載しましたが、子どもの集中力が続くのは小学生の場合、勉強や遊びに関わらず10~20分集中していれば「集中力がある」と言えます。
きちんと勉強に集中してもらうためにも、休憩はしっかりととりましょう。ただし休憩と言ってもこの場合はゲームやテレビを指しません。ゲームやテレビでは脳は休まらないためです。休憩はストレッチしたり、目を休めたり、飲み物を飲んだりするのがおすすめです。
1回の勉強時間は子どもの集中力に合わせて決め、10分勉強したら3分休憩するなど、ルールを決めて勉強を区切ってあげてください。無理に長い時間勉強を強いると、ほとんどの時間の記憶が残っていないなどの結果になることもあります。
一番記憶に残るのは、勉強し始めと終わりとも言われます。そうすると初めから終わりまでの時間が長いと記憶に残りにくい時間が増えてしまい、効率的な学習になりません。1度の勉強でも内容を区切って休憩を入れた方が、始まりと終わりが増えて記憶が残りやすくなりますよ。
頑張っている時間が無駄にならないように、子どもの集中力に合わせたルールを探してあげてください。
また、夜の睡眠も重要です。「暗記は寝る前にしたほうがいい」と聞いたことはないでしょうか?人の記憶は寝ている間に整理されるので、寝る直前に記憶したことは優先的に脳に記憶されていきます。そのため睡眠の前にインプットしたことは、人の記憶に残りやすいとされています。
勉強中の休憩も、睡眠も、効率的な勉強には欠かせない要素です。子どもが小さいうちは、なかなか自分でコントロールできないことなので親がサポートしてあげてください。
集中学習と使い分ける
分散学習は反復で身につける学習でした。それでは、一気に勉強する「集中学習」が効果を発揮するのはどんな場面なのでしょうか?
集中学習が適しているのは、新しい単元を勉強するときなどです。学習内容を理解するためには、一気に集中して基礎を身につけるのが効率的です。まだ理解していない内容を分散学習で繰り返しても、あまり意味がありません。そもそも理解していないのですから。
そんなときには集中学習で、理解に徹して基礎を身につけましょう。集中学習で身につけるのは次のような内容です。
これらを集中学習で身につけて、あとは分散学習で実践を重ねれば、効率的に勉強を積み重ねられます。
まとめ
分散学習で繰り返し学習すると、記憶の定着率が上がります。今「子どもの記憶力が悪い」と感じている保護者は、学習の仕方を変えるだけでお子様の記憶力の伸びを感じられるかもしれません。
分散学習は、今すぐにでも始められます。
ただ、自己管理がまだ十分にできていない子どもの場合、子どもの力だけではうまくいかないこともあります。その場合には親が時間管理をしてあげるなどのサポートが必要です。
分散学習は効率的に勉強でき、記憶力向上に貢献してくれる学習法です。集中学習と上手に使い分けながら、お子様の日々の勉強にぜひ取り入れてあげてください。
分散学習だけで子どもの記憶力が改善しない場合
お子様に関するお悩みで、下記のようなことでお困りごとがある場合、分散学習だけで記憶力を改善することは難しいと言えます。
・授業、勉強に集中できていない
・先生の問いかけや指示に従えない
・会話のキャッチボールが続かない
・複数の指示を覚えられない
・忘れ物、なくしものが多い
・学習についていけずに支援級を進められている
上記のお悩みを抱える子どもは、ワーキングメモリ不足を疑う必要があるかもしれません。しかし、もし子どもがそうだとしたら、改善してあげることはできないのでしょうか?
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間違えると問題が変わり類題で反復。遅れ気味な教科だけを戻って学習することも
問題文章や選択肢が変わったり、異なる図形が表示されたり、問題数が多く類題も豊富です。あまり理解できていないまま答えを覚えて先に進んでしまうことがありません。年齢に関わらず学習する学年も選べるので「小学4年生だから小4の教材」ではなく、勉強の成果を求めるなら、得意教科は先取り学習、苦手教科は戻り学習をすることが可能です。
「教科書準拠」だから学習成果に直結します
「天神」は全国の小学校の教科書に準拠しているため、お使いの教科書の内容と同じように進めていくことができます。勉強が苦手だった子どもが「天神を始めてから、授業で”昨日、天神で予習した!”という経験を積み重ねることで、積極的に授業に参加するようになった。」というお声もいただいています。教科書通りの問題目次を学習する事でお子様の勉強に対する自信にもつながります。
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