親ができる「子どものやり抜く力(グリット)」を引き出す育て方
近年教育現場で重要視されている「非認知能力」。その中でも最近注目されているのが、子どものやり抜く力(グリット)です。この記事では、子どものやり抜く力(グリット)を育てるために親ができることについて解説していきます。やり抜く力(グリット)について詳しく知りたい、育む方法を知りたい、という方は、ぜひ最後までご覧ください。
非認知能力の一つ「やり抜く力(グリット)」とは?
そもそも、やり抜く力(グリット)とはどのような能力なのでしょうか。やり抜く力(グリット)は、ペンシルバニア大学心理学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱した能力のことで、構成する4つの力の頭文字を取っています。
- Guts(ガッツ):度胸、根性、困難な力に立ち向かっていく能力
- Resilience(レジリエンス):復元力、失敗してもあきらめずに継続できる力
- Initiative(イニシアチブ):自発性、自分で目標を見つける力
- Tenacity(テナスティ):執念、最後までやり遂げる力
継続力(粘り強さ)だけでなく情熱も掛け合わさったものが、「やり抜く力(グリット)」と言われる能力です。
グリットの重要性を示す研究結果
グリットについては、いくつかの研究によってその重要性が示されています。
米国陸軍士官学校で行われた研究では、入学後すぐに行われる厳しい訓練を乗り越えられた学生は、脱落した学生よりグリットのスコアが高かったという結果が出ています。
また、横浜国立大学の藤原准教授らは、
小学生にとって非認知特性であり、社会情緒的コンピテンスの 1 つであるとされているGritを育成することは、学級適応やスクールモラールを高めていく上で重要な要素であると考えられる
小学生のGrit(やり抜く力)と学級適応・スクールモラール・ソーシャルスキルとの関連の検討 藤原寿幸,河村茂雄
と述べています。これらの他にも、グリットの重要性を示す様々な研究結果が発表されています。
グリットは遺伝の影響も少なからず関係する
グリットは先天的なIQの高さとは関係なく、誰もが努力によって後天的に伸ばせる能力です。
一方、遺伝の影響も少なからず関係するという実験結果もあります。一卵性双生児を対象に行った実験において、粘り強さと情熱の両項目で遺伝の影響がみられました。グリットには遺伝の影響があることは事実ですが、周囲の環境や関わりによって育まれる部分も多くあります。
子どものやり抜く力(グリット)の育て方
子どもが将来よりよく生きていくために重要となる「やり抜く力(グリット)」。ここからは、やり抜く力(グリット)を伸ばすために親ができることを具体的に紹介していきますので、参考にしてください。
すぐに手を貸さない
まず大切になるのが、子どもが困っているときにすぐに手を貸さないことです。
大人が手を貸せばすぐに解決することでも、子どもが自分で試行錯誤できるよう見守ってあげることが大切です。例えば、子どもが宿題で分からない問題があったとき、すぐに解き方や答えを教えてしまうのではなく、子ども自身で答えに辿り着けるようにしてあげましょう。子どもにチャレンジを与え、困ったことを解決するために自分自身で考え工夫する経験を積むことで、「やりぬく力」が身についていきます。
親が「やり抜く力」の手本を見せる
親が「やり抜く力」の手本を見せることも、子どものやり抜く力を高めます。身近な大人が諦めずにやり遂げる姿を見せることで、やりきった先には達成感や幸福感が待っているということを学ぶことができます。
成功体験を積み重ねてあげる
子どものグリットを高めるためには、「できた!」という喜びを体験することが大切です。
「頑張ったらできた」という成功体験を積み重ねていくことで、子どもは「自分ならやり遂げられる」という自信をもてるようになります。家庭でも、子どもが達成できそうな簡単なお手伝いを頼む、役割を与えるなど、子どもが「できた!」と感じられるような工夫をしてみましょう。
色々なことに挑戦をさせる
ジャンルに捉われず、色々なことに挑戦させることもグリットを高める一つの要因です。子どもは好奇心旺盛な一方で興味の移り変わりも早いため、一度「やりたい」と言ったことでも長く続かないことが多いですよね。「この子は飽きっぽいから」と諦めずに、根気強く様々な経験をさせてあげましょう。
自分で定めた目標をクリアさせる
子どもが自分で目標を定め、それをクリアする経験をすることも大切です。自分で決めたことに責任をもって取り組むことで、やり抜く力がつきます。野球が好きな子どもなら、毎日素振りをする、ストレッチをするなど、自分の好きなことの中で自分で目標を定め、楽しみながら継続できるようサポートしてあげましょう。
結果ではなく、過程を評価し具体的に褒める
子どもが何かをやり遂げたとき、「上手にできたね」「100点を取ってすごいね」など、結果を褒めていませんか?
子どものやり抜く力を育てるためには、「何かを成し遂げた」という結果に目を向けるのではなく、「その結果に至るまでの過程」を具体的に褒めることが大切です。例えば子どもが上手な絵を描けたとき、「最後まで時間をかけて描いていたね」「細かいところまでこだわっていたね」など、過程や努力を具体的に褒めることで、子どもの自信につながり、また頑張ろうという気持ちが芽生えます。
失敗させて、失敗から立ち上がる経験をさせる
子どものグリットを高めるためには成功体験を積み重ねることが大切です。しかし、何かに挑戦した結果、失敗してしまうこともたくさんありますよね。
そんなとき、失敗を恐れて挑戦をやめてしまってはもったいないです。失敗してしまったときこそ、グリットを育むチャンスになります。もう一度チャレンジして成功することができれば、子どもにとって大きな自信となります。子どもが失敗しないようにと親が先回りしてしまうのではなく、失敗から立ち上がるためのサポートをしてあげることが大切です。
親や偉人の「やり抜く力」エピソードを話す
子どものやり抜く力を育むために、親が手本となりやり抜く姿を見せることが大切であると前述しましたが、やり抜く力に秀でていた偉人や、親が実際に体験したエピソードを話すこともよい影響を与えます。
何度失敗しても諦めず、やり抜いたことで成功を収めたという実例を知ることで、最後まで情熱をもってやり抜くことの大切さを学ぶことができます。また、何かに挑戦してうまくいかないときにそれらのエピソードを思い出すことで、子どもの心の支えにもなります。
やり抜く力(グリット)を育む上での環境づくり
子どものやり抜く力(グリット)を育むためには、住環境も重要なポイントとなります。
例えば、親子が互いの様子を把握できるオープンな環境であれば、子どもが勉強をしている様子がよく見えたり、お手伝いを頼みやすかったりします。すると、子どもを褒める、役割を与えるなどのコミュニケーションが取りやすくなり、やり抜く力を育むことにつながります。子どものやり抜く力を伸ばすには、という視点で環境作りを考えてみてください。
まとめ
この記事では、子どものやり抜く力(グリット)について解説してきました。数々の研究からも重要性が示されており、子どもに身に付けてほしい力の一つですよね。やり抜く力を育むためには環境や関わり方が大きく影響していますので、各家庭の状況やお子さんの個性を考えながら、できることから取り組んでみてください。
子どものやり抜く力(グリット)を育てることは簡単ではありません。
今回ご紹介した「子どものやり抜く力(グリット)の育て方」をご自身で意識しながら、ご自身がお子様に教えていくイメージができますでしょうか?家事や育児、仕事をしながら毎日繰り返して教えていくイメージができますでしょうか?
「この子の将来のため!」という気持ちがあっても忙しい毎日に追われ、「取り組むのは難しい…」と思われませんか?
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